甲状腺について

甲状腺とは

甲状腺とは甲状腺は、首の前部、喉仏のすぐ下に位置する、蝶が羽を広げたような形をした2つの小葉(右葉、左葉)を持つ内分泌器官です。長さは縦約4cm、重さは約15gで、すぐ後ろの気管を取り囲むように位置します。通常、甲状腺は柔らかく、外からは触っても認識できませんが、何らかの病気により腫れて大きくなると、首のあたりで厚くなり、外観からもわかるようになります。甲状腺は、体の成長を促したり、新陳代謝を活発にしたり、その他必要なエネルギーを産生する甲状腺ホルモンを分泌します。エネルギー産生、代謝、循環器系の調整を担っており、分泌が過剰になったり、減少したりすると、様々な症状を引き起こします。

甲状腺ホルモンとは(甲状腺ホルモンの働き)

甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)とトリヨードチロニン(T3)があります。サイロキシン(T4)は甲状腺で生成され、肝臓でT3となりホルモンとして働きます。脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、血液中の甲状腺ホルモン量を一定に保つ機能があるため、甲状腺ホルモンが不足するとTSHの分泌が増加して甲状腺を刺激します。逆に甲状腺ホルモンが過剰になるとTSHの分泌は抑えられます。

甲状腺ホルモンが増加(亢進)する病気

甲状腺ホルモンの分泌が過剰になると、次のような病気になります。主な症状は、首の腫れ、動悸、発汗、手の震え、食欲に関係なく体重が減るなどです。

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンの過剰分泌により起こる自己免疫疾患で、20~30代の女性に多く見られます。バセドウ病の治療には、薬物療法、放射線療法、手術療法などが用いられます。当院では、抗甲状腺薬による薬物療法を行っています。手術などの治療が必要な場合は、専門の医療機関をご紹介します。

亜急性甲状腺炎

甲状腺に炎症が起こることが原因で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。症状としては、甲状腺の腫れ、発熱、痛みなどがあります。ウイルス感染が原因となることが多く、風邪の後に発症することが一般的です。数ヵ月以内に自然に治りますが、炎症や症状がひどい場合は、抗炎症薬や動悸を抑えるβ遮断薬が投与されます。

ホルモンが低下(減少)する病気

甲状腺ホルモンの低下によって起こる病気には、次のようなものがあります。主な症状は、首の腫れ、疲労感、無気力、倦怠感、体重増加、便秘、皮膚の乾燥などです。

橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病(慢性甲状腺炎)は、甲状腺ホルモンの機能低下によって起こる病気です。甲状腺機能が低下すると、不定愁訴など様々な症状が現れますが、原因を特定することは困難です。慢性甲状腺炎は自己免疫疾患であり、30~40代の女性に多く見られます。検査をしても、病気の初期は甲状腺機能が正常で「甲状腺異常なし」と診断され、後に甲状腺機能が低下することがあります。ご心配な場合は再検査をお勧めします。特定の治療法はなく、甲状腺ホルモンが低下するに伴い甲状腺ホルモンの内服薬が処方されます。

甲状腺にしこりができる病気

甲状腺にしこりができる病気甲状腺のう胞(良性)と甲状腺がん(悪性)などがあります。甲状腺の腫瘤の80~90%は良性で、特別な治療は必要ありませんが、悪性のほとんどは乳頭がんで、外科的治療が可能です。適切な治療を行えば、生命を脅かすことはほとんどなく、手術後の10年生存率は90%以上とされています。
甲状腺の腫れや喉の違和感を訴えて受診される患者様もいらっしゃいますが、全く自覚症状がない場合も多く、乳がん検診などの超音波検査で腫瘤が発見されることも少なくありません。なお、甲状腺腫瘤の明確な原因はまだわかっていません。

誤解されやすい病気

  • だるさ、無気力:うつ病
  • 体重減少:がん
  • 物忘れ、ぼんやりする:認知症
  • 血圧の上昇:高血圧
  • 様々な症状が現れる:自律神経失調症、更年期障害
  • 動悸、息切れ:心臓病
  • むくみ:腎臓病
  • 肝機能障害:肝臓病
  • 高血糖や尿糖:糖尿病

甲状腺の検査

血液検査

甲状腺ホルモンの分泌量を調べるために、ホルモン値を確認します。同時に甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT3、FT4)を測定します。これらの値に異常が見つかった場合は、原因を調べます。甲状腺は、体が自らを攻撃することで発症する自己免疫疾患です。そのため、甲状腺に対する抗体を測定することで診断を行います。

超音波検査

甲状腺ホルモンの分泌に異常があると、甲状腺自体が大きくなったり小さくなったりすることがあります。また、腫瘍ができている場合もあるので、甲状腺の大きさや腫瘍の有無、内部の構造などを検査します。必要な場合は、甲状腺細胞を取り出して悪性細胞の有無を確かめます。

甲状腺の腫れ・しこりに気づいたらご相談ください

甲状腺の病気は自覚症状が少なく、異常に気づきにくいのが特徴です。そのため、気づかないうちに病気が進行してしまうこともあります。ご心配な点がありましたら、早めに当院にご相談ください。病状や進行度合いによって、より精密な検査や治療が必要と判明した場合には、提携の専門医療機関をご紹介します。