舌下免疫療法とは?
「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが受けることのできる治療です。
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の治療法のひとつに、アレルゲン免疫療法があります。
アレルゲン免疫療法は、100年以上も前から行われている治療法です。主には、アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が行われていますが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。
スギ花粉やダニ抗原を原料とした錠剤を少量から舌下に連続投与することで体を慣らして、スギ花粉やダニによるアレルギー症状を抑える治療です。
舌下免疫療法を行うメリットについて
体質を根本から改善する
アレルギー性鼻炎の一般的な治療法は、すでにあるアレルギー症状(くしゃみ、鼻水、咳、目の腫れや痒みなど)を緩和することを目的としています。一方、舌下免疫療法の特徴は、根本的な体質改善によってアレルギー症状そのものを発症させない、あるいは発症しても軽度に抑えることにあります。
アレルギー反応がほとんど出なくなれば、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の不快な粘膜症状も消失し、落ち着いて日常生活を送ることが可能になります。鼻や目を頻繁にティッシュなどでこすることによる皮膚の炎症もなくなり、アレルギー薬の服用による眠気などの副作用もないため、生活の質(QOL)の向上も期待できます。
通院せずに自宅で治療が可能
舌下免疫療法は、舌の下に薬を入れてしばらく置いてから飲み込む治療法ですので、どなたでも簡単に行えます。初回は医師の指導のもとで服用するため通院の必要がありますが、2回目以降はご自宅での継続治療が可能です。
1日1回、毎日服用する薬です。アレルギー症状の経過観察のために月一回を目安にご来院いただく必要はあります。
保険適用の対象です
舌下免疫療法は保険が適用されるため、自己負担額を低く抑えることができます。3割負担の場合、スギ花粉症の治療で月平均1,800円程度、ダニアレルギー性鼻炎の治療で月平均2,000円程度です。受診の際は必ず保険証をお持ちください。なお、医療機関ごとに診察料や検査費用が別途加算されます。
5歳以上のお子様も治療可能です
舌下免疫療法の対象年齢は5歳以上65歳未満です。また、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎は、小さなお子様でも治療が可能です。ただし、アレルギーの原因物質を特定するための血液検査は必要になります。
また、「子ども医療費助成制度」の対象であるため、条件を満たせば実質無料での治療が可能です。乳幼児医療証が必要になるため、事前に申請して交付を受けてください。
治療の効果について
- 約 6 割の人がアレルギーの症状が軽くなり
- 約 2 割の人が寛解する(症状がほとんど出なくなる) と報告されています
今まで飲まれていた花粉症薬の内服をする必要性がなくなる方も多いです。
副作用について
舌下免疫療法は、重篤な副作用としてアナフィラキシーショックを起こす可能性が挙げられます。
その際の症状としては、喘息のような呼吸困難、蕁麻疹や赤い発疹などの皮膚症状、嘔吐や吐き気、下痢、腹痛、視野の狭窄、血圧の低下、意識の混濁などがあります。
アナフィラキシーショックの発症は非常にまれですが、このリスクに対処するために、まず医師の監督下で薬剤が投与されます。
治療の対象
- スギ花粉症の患者様
- ダニアレルギーの患者様
※診断はご本人の自覚症状と血液検査によって行います
治療を受けることのできない方
- 重度の気管支喘息患者様
- 5歳未満のお子様および65歳以上の方
- 治療開始時に妊娠中の方(治療中の妊娠については問題ありません)
- ステロイドまたはβ阻害薬を服用中の方
- 悪性腫瘍、自己免疫性の病気、免疫不全のある患者様
- 採血の結果で軽症の場合
治療方法
薬を舌の下に置き、規定の時間そのままにしてから飲み込んでください。
服用後 5 分間はうがいをしたり、飲食したりしないでください。
※スギ花粉症がある場合は、スギ花粉が飛散していない時期でも毎日薬を服用します。
治療期間
治療開始後、1日1回の服用を3~5年間続けていただきます。
基本的には1ヵ月に1回の通院が必要です。
治療を開始できる時期
スギ花粉症の患者様
花粉飛散時期(1~5 月)には治療を開始することができません。
ダニアレルギーの患者様
通年治療可能です。
注意点
処方開始当日は、診察時に医師の前で薬を服用後、院内で30分程度待機していただきアレルギー症状が出ないか確認します。
舌下免疫療法は、定期的な通院と内服薬が必要で、時間と労力がかかる治療ですが、多くの患者様がその効果を実感されています。ご興味のある方は、受診時にお気軽に医師までご相談ください。