お子様の嘔吐・下痢・腹痛
お子様の嘔吐や下痢は、ウイルスや細菌感染に対する体の自然な反応として起こることが多いとされています。これらの症状は、体が感染源や有害物質を排除しようとしている証拠です。しかし、原因はお腹だけではなく、食物アレルギーやその他の病気が関係している場合もあります。そのため、症状が続いたり、いつもと違う症状が現れたりした場合は、すぐに専門家に相談することが大切です。
また、血便にも注意する必要があります。ほとんどの場合、一時的な「胃腸風邪」などによるものですが、「腸重積」と呼ばれる病気の可能性もあります。この「腸重積」は、特に小さなお子様に多く見られ、重篤な合併症の発症リスクがあります。そのため、便に血が混じっていることに気づいた場合や、特に激しい痛みや高熱を伴う場合には、早めの治療が必須です。
当院では、このような症状や疑問に対して適切なアドバイスや治療を行っています。お子様の健康や発育についてのご不安や疑問などがある場合は、お気軽にご相談ください。
お子様のお腹の病気でみられる症状
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 便秘
- 血便
- 排便痛
- 体重が増えない
- 体重が減ってきた
その他
急性胃腸炎
ウイルスや細菌による感染で腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れる病気が急性胃腸炎です。感染性胃腸炎や嘔吐下痢症とも呼ばれ、特効薬はありませんが、通常2週間以内で自然に治ります。お子様の嘔吐や下痢の多くは急性胃腸炎が原因で、その半数はロタウイルスやノロウイルスによるものです。これらのウイルスは感染力が強く、便や嘔吐物を介して人から人へ広がります。ノロウイルスは11月から冬にかけて、ロタウイルスは冬から4~5月に流行のピークを迎えます。
お子様の体は成人に比べて水分の割合が多く、また水分量の調整機能が未熟なため、少しの嘔吐や下痢でも脱水症状が生じやすくなります。脱水が進むと「泣いても涙が出ていない」「口の中がベタついている」「尿の量が減る」などのサインが現れます。このような場合は経口補水液が適しています。あらかじめ用意しておき、嘔吐や下痢の症状が出たら、脱水のサインが出る前にお子様に飲ませてください。
腸重積
腸重積とは、腸が丸まって腸の中に入り込んで、腸の中で重なり合った状態になる病気です。そうなると、重なり合っている部分の腸が圧迫され、時間が経つとその部分の腸が傷付いてしまいます。主な症状は、腹痛、嘔吐、イチゴジャムのような色の血便(粘液状の血便)です。お子様が「泣いては、またすぐに疲れてぐったりする」という症状を繰り返す場合には注意が必要です。初期段階では血便が出ないこともあるためです。
重なり合った腸を元の位置に戻すための特別な治療が行われますが、発症から時間が経っている場合は、すでに腸が傷付いている可能性があり、手術が必要になる場合もあります。
腸重積症は早期発見、早期治療が大切です。イチゴジャムのような血便が出たら、夜間や休日でもすぐに医療機関を受診してください。
虫垂炎
急性虫垂炎は、一般的に「もうちょう」と呼ばれ、虫垂が炎症を起こすことで発症します。虫垂は細く、ミミズのような形の細い袋状の腸で、便やリンパ組織の腫れによって詰まりやすい形状になっています。通常の腸炎であれば、腸内で増殖した病原菌は下痢によって洗い流されますが、虫垂が詰まると、菌は逃げ場がないため、炎症によって虫垂の壁が徐々に侵食されていきます。病気が進行すると虫垂に穴が開いて腹膜炎を起こします。治療方法は病状の進行状況にも寄りますが、抗菌薬で治療する内科療法と手術をする外科療法があります。症状は腹痛、嘔吐、発熱などですが、腹痛はみぞおちあたりから始まり、徐々に右下腹部へと移動していくのが特徴です。
お子様の虫垂炎は、症状や診察時の訴えから発見することが難しいことが多く、穿孔や腹膜炎を起こして初めて発見される例も少なくありません 。
いつもより元気がなかったり、食欲がなかったりといった初期症状に続いて腹痛、便秘、嘔吐、発熱などの症状が見られる場合は、虫垂炎(急性虫垂炎)が疑われるため、すみやかに受診してください。
便秘
便秘とは、「便が詰まっていたり、出にくかったりする状態」と説明されます。お子様の便秘における代表的な訴えとしては、「排便回数が少ない」、「便が硬い」、「排便時に痛みや出血がある」などが挙げられます。
便秘は症状の経過によって、一過性便秘と慢性便秘に大別されます。
一過性便秘は、便が排出されると症状が消失する便秘です。腹痛などの症状が突然起こり、浣腸などで便を排出すると改善します。慢性便秘は、乳幼児期では1ヵ月以上、小学生以上では2ヵ月以上「便秘」の症状が持続するものと定義されています。
慢性便秘は、腸や全身に明らかな原因がない便秘(機能性便秘と呼ばれます)が原因であることが多いのですが、長期にわたることも多く、日常生活に影響することもあります。治療開始が遅くなればなるほど症状が長引き、治療期間も長くなりやすいため、適切な診断と治療を行うことが重要です。
治療には様々な選択肢がありますが、当院ではガイドラインに基づいた標準的な治療をご提案し、お子様や保護者の方々と相談しながら治療を行います。便秘でお困りの方はお気軽にご相談ください。当院では、ご兄弟やご家族の便秘にも対応します。
過敏性腸症候群
小学生から中学生、成人に至るまで「緊張するとお腹が痛くなる」「何度もトイレに行きたくなる」という症状を訴える方は少なくありません。胃や腸に明らかな原因のない機能性腹痛や過敏性腸症候群が原因で起こる場合が大半ですが、学校や職場で頻繁にトイレに行くことなどは日常生活にも支障をきたします。
これらの症状をお持ちの患者様の中には、胃十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患 (潰瘍性大腸炎またはクローン病)、または好酸球性胃腸疾患など、治療が必要な病気が潜んでいる可能性があります。まず、その病気に明確な原因(器質的疾患)があるかどうかを判断します。
過敏性腸症候群は下痢型、便秘型、混合型(下痢型と便秘型)に大別され、その病型に応じて治療法も異なります。当院では、まず原因がはっきりしているかどうかを判断し、日常生活に支障がある場合には内服薬の投与を行います。
お子様の過敏性腸症候群は数年以内に改善することがほとんどですが、場合によっては学校に通えないなど社会生活に影響したり、生活の質が低下したりする場合もあります。頻繁な腹痛や下痢でお困りの方はお気軽に当院へご相談ください。
乳糖不耐症
乳糖不耐症は、体が牛乳に含まれる乳糖成分を適切に消化できない状態です。
乳糖は母乳、粉ミルク(乳児用調製粉乳)、牛乳などに含まれています。乳糖を消化するには特別な酵素が必要ですが、何らかの理由でこの酵素が正常に分泌されなくなると、乳糖が正常に消化されず腸内で発酵し、下痢や酸っぱい臭いがする便の原因となります。
乳糖不耐症には、先天性乳糖不耐症(乳糖を消化する酵素が生まれつき分泌されていない)と続発性乳糖不耐症(酵素の分泌が一時的に低下する)があります。続発性乳糖不耐症は、胃腸炎後のお子様に特によく見られます。
一般的に、胃腸炎の発症後、約2週間は下痢の治療を行います。ただし、その後も乳製品を摂取したときに下痢が続く場合は、二次性乳糖不耐症が考えられます。
乳糖不耐症には、乳糖を分解して消化を助ける薬で治療を行います。あるいは、乳糖を含まないタイプの粉ミルクに切り替えて経過を観察することもあります。
なお、既に離乳食を開始している場合は、乳製品の摂取量を減らすよう求められる場合があります。基本的に、乳糖を含む食品、特に牛乳は避けることをお勧めします。