骨粗鬆症

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは骨粗鬆症は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
日本の骨粗鬆症患者数は1,300万ともいわれ、特に閉経を迎えた女性に多いとされています。ある調査によると、60代女性の3人に1人、70代女性の2人に1人が骨粗鬆症であるという報告もあります。
自覚症状がないまま進行し、軽い骨折がきっかけで気づく場合が多く、悪化するといつのまにか骨が潰れていることもあるため「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。
転倒による骨折が要介護者全体の10%を占めるなど、介護が必要になる原因としても知られています。骨粗鬆症は健康寿命や生活の質を守るためにも注意が必要な病気です。

骨折しやすい部位

特に、骨折はこれらの部位で起こりやすいとされています。

  • 背骨(脊椎椎体)
  • 肋骨
  • 太ももの付け根(大腿骨近位部)
  • 手首(橈骨遠位端)
  • 腕の付け根(上腕骨近位位部)

骨粗鬆症の原因

骨は破壊と再生の代謝サイクルによって強度が保たれています。このバランスが乱れると、骨はもろくなり、骨折しやすくなります。主な危険因子としては加齢や更年期が挙げられますが、飲酒、喫煙、食生活、運動不足によっても骨粗鬆症が起こることがあります。極端なダイエットが原因で若い世代に発症することもあります。
また、病気や服薬の影響によって、続発性の骨粗鬆症が起こることもあります。関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、副甲状腺機能亢進症などの基礎疾患がある場合や、ステロイド薬を服用している場合は、定期的な骨密度測定が必須となります。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症は、骨折が起こるまでは特に自覚症状はありません。
骨粗鬆症による骨折には、脆弱性骨折と「いつのまにか骨折」があり、通常の強い衝撃による骨折とは異なります。
脆弱性骨折は、つまずいたときに手を骨折した、重いものを持ったときに骨折したなど、些細な事故による骨折です。
「いつのまにか骨折」は、何もしていなくても、体の重さなどが原因でいつ起こったのかわからない骨折のことです。例えば背骨が自重で押しつぶされて骨折が起こることも多く、痛みを伴わないこともあります。背骨が次々と押しつぶされ、低身長、背中や腰が曲がるなどの症状が出ることもあります。手術が必要になることもあり、長期の安静によって筋力や身体機能が衰えて寝たきりになることも少なくありません。
骨折が起こる前に適切な治療を行い、骨密度を改善することが骨粗鬆症の予防には重要です。特に女性は、自覚症状がなくても閉経したら定期的に骨密度検査を受け、早期に適切な治療を開始することが大切です。

骨粗鬆症の検査・診断

骨粗鬆症の検査・診断患者様の体の状態、骨折経験や基礎疾患の有無、服用中の薬、女性の場合は閉経の有無や時期などを伺います。診断は、身体所見、レントゲン検査、骨密度測定などの総合的な評価に基づいて行われます。
脊椎や股関節の骨折で受診された場合、骨折の原因となった衝撃の程度によっては、骨粗鬆症の可能性を疑いながら適切な検査によって診断が行われます。
骨密度測定の方法にはいくつかありますが、当院では「骨粗鬆症の治療と予防ガイドライン」に基づき、腰椎と大腿骨にDEXA法を行うことにより、正確な骨密度測定に努めています。これは所要時間約5分の、負担の少ない検査です。骨粗鬆症が気になる年代の方は、お気軽に当院へご相談ください。
骨粗鬆症と診断された場合、血液検査で骨粗鬆症マーカーを測定し、適切な治療薬を検討します。この骨粗鬆症マーカー測定は治療中も定期的に行い、治療薬の効果や副作用の有無を確認します。

こんな方には骨密度検査をお勧めしています

  • 閉経後の女性
  • 70歳以上の男性
  • 関節リウマチや内科の病気(糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、内分泌疾患など)のある方
  • ステロイドを長期間服用している方
  • 喫煙や過度の飲酒習慣がある方
  • 両親に股関節骨折(大腿骨近位部骨折)のご経験がある方

骨粗鬆症の予防と治療

骨の再生と強化には、食事や運動などの生活習慣の改善が効果的です。骨密度を改善し、骨粗鬆症を予防するために以下のことが推奨されます。

バランスのとれた食生活

カルシウムは骨の主成分ですが、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKも骨密度の向上に欠かせません。バランスの良い食事を心がけましょう。

適度な運動の習慣化

運動は骨を作る細胞を活性化し、筋肉を強化して体のバランス能力を改善します。その結果、転倒しにくくなり、骨折のリスクを減らします。

薬物療法

上記に挙げた生活習慣の改善と並行して、薬物療法による治療を行います。

骨を破壊する「骨吸収」を抑制する薬

  • ビスホスホネート製剤 :アクトネル、ベネット、ボナロン、ボンビバなど
    ※錠剤の他、ゼリー剤、注射剤も使用可能です。
  • 選択的エストロゲン受容体モジュレーター (SERM) :エビスタ、ビビアントなど
  • 抗RANKL抗体薬 :プラリア

骨を作る「骨形成」を促進する薬

  • 副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド(オスタバロ、テリボン)

骨形成と骨吸収抑制の両方の作用を持つ薬

  • 抗スクレロスチン抗体(イベニティ)

骨の代謝に必要な栄養素

  • 活性型ビタミンD

骨粗鬆症は治療で完治する病気ではないため、長期的な治療が必要です。また、病気の進行度や状態、年齢、性別、持病、服用中の薬などによって適切な治療法は異なります。そして、骨粗鬆症治療においては、骨折を起こさないことが非常に大切です。骨の強度を高めるだけでなく、転倒を予防するための筋力やバランス能力の強化方法などのアドバイスもトータルケアに含まれます。
また、骨粗鬆症で骨折をした方は、骨折が連鎖して日常生活に大きな支障をきたす可能性が高いため、早めに再発予防の治療を受ける必要があります。