生活習慣病・慢性疾患

糖尿病

糖尿病

糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度が高まり、結果として血糖値が高い状態が長く続く病気です。食事から摂取した糖は、インスリンというホルモンによって体内でエネルギーに変換されます。しかし、糖尿病の場合、インスリンの働きが不足したり効果が弱かったりするため、血糖値が上昇します。血糖値が長期間高いままでいると、全身の血管に負担がかかり、動脈硬化を引き起こす可能性があります。さらに、失明に繋がる網膜症、透析が必要になる腎症、壊死により足の切断に繋がる神経障害など、重篤な合併症を引き起こすリスクもあります。血糖値は、適切な生活習慣改善と薬物療法によってコントロールすることが可能です。

糖尿病

高血圧

高血圧とは

血圧は運動や気温の変化、ストレスなどによって変動しますが、常に高い状態が続くのが高血圧です。高血圧はどんなに数値が高くても自覚症状がないことが多く、知らぬ間に進行してしまうこともあるため要注意です。
血圧の数値が高くなると頭痛やめまい、息切れなどの症状が現れることもありますが、そのような症状がなくても早い段階で医師の診察を受け、治療を開始することが重要です。
さらに、高血圧が進行すると心筋梗塞 や脳卒中のリスクが高まります。高血圧が発見されたら、できるだけ早く適切な治療を受け、血圧をコントロールすることが大切です。

高血圧の原因

血圧とは心臓から送られた血液が血管壁にかける圧力のことです。収縮期に最大に、拡張期に最小になります。血圧は、血液の量や粘度の上昇で高くなり、高血圧が続くと血管が硬くなり、悪循環が続きます。
高血圧の原因は遺伝、食生活や運動不足、加齢などです。塩分の過剰摂取も、血液中の塩分を薄めるために水分を増やし、血液量を増やして血圧を上昇させます。また、過食や食物繊維の不足、栄養失調も血液の粘度を高め、高血圧の発症や進行につながります。
さらに、ストレスは自律神経のバランスを崩し、高血圧を誘発します。
また、運動不足は血行不良による高血圧を引き起こします。
飲酒や喫煙は高血圧の直接的な原因になりますし、血圧を上昇させる病気や薬もあります。

高血圧の種類

高血圧には、生活習慣が原因の本能性高血圧と、特定の病気が原因の二次性高血圧があります。本能性高血圧は、遺伝的素因に塩分の過剰摂取、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、運動不足などの環境要因が加わって発症します。日本人の多くはこのタイプの高血圧です。
二次性高血圧には腎血管性高血圧や睡眠時無呼吸症候群 などがあり、これらの場合は原因となる病気の適切な治療が必要となります。

高血圧の基準

高血圧の診断基準は140/90mmHg以上ですが、ご自宅で測定した場合の基準値は135/85mmHg以上とされています。医療機関などで測定した場合と基準値が異なる理由は、ご自宅はリラックスできる環境で緊張感が少なく、正確に血圧を測定できるためです。
近年高血圧の悪影響がさらにわかってきており、最新のガイドラインでは年齢や既往にもよりますが、125/75mmHgを目標とするように一段厳しい基準となっています。

高血圧の治療

治療の目的は、高血圧による動脈硬化の進行を抑え、心筋梗塞や脳卒中などの合併症の発症を予防することにあります。そのため、血圧を適切な値まで下げる降圧薬などの薬物療法と、高血圧の改善に繋がる生活習慣の改善を並行して行います。
二次性高血圧の場合は、原因となる病気の治療を最優先に行います。
近年、3種類以上の降圧薬を服用しても目標血圧に達しない「難治性高血圧」の患者様が増加傾向にあります。二次性高血圧は、原因となる病気が精査されていない場合がほとんどですので、お気軽にご相談ください。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症とは?

血液中にはコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド/TG)などの脂質が含まれています。脂質が過剰であったり、バランスが崩れたりすると、動脈硬化の発症や進行が促進されます。以前は脂質が多いことだけが問題視され、高脂血症と呼ばれていました。しかし、血液中の余分な脂質を回収する機能が動脈硬化に大きく関わっていることが明らかになり、現在では脂質が基準値を超えた場合も含めて脂質異常症と呼ばれるようになりました。

脂質異常症の原因

運動不足、肥満、喫煙、飲酒、食生活の乱れ、ストレスなどが脂質異常症の原因と考えられています。特に、メタボリックシンドロームとして知られる内臓脂肪型肥満では、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が高く、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低くなります。また、遺伝性の場合もあり、遺伝性脂質異常症(家族性高コレステロール血症)は動脈硬化に進展しやすいことが明らかになっています。

脂質異常症の種類

血液中の脂質には、悪玉コレステロールであるLDLコレステロール、血液中の余分なコレステロールを回収する善玉コレステロールであるHDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド/TG)があります。

高LDLコレステロール血症 悪玉のLDLコレステロールが多い
低HDLコレステロール血症 善玉のHDLコレステロールが少ない
高トリグリセライド血症 中性脂肪(トリグリセライド/TG)が多い

コレステロールについて

コレステロールには「悪玉」と「善玉」の2種類があります。悪玉のLDLコレステロールは動脈硬化の発症や進行を引き起こす一方、善玉のHDLコレステロールは余分なコレステロールや動脈壁に溜まったコレステロールを回収する役割を果たしています。
善玉コレステロールが不足していると、悪玉LDLコレステロールがそれほど多くなくても動脈硬化のリスクが高まります。これは、HDLが動脈をクリーンに保つ体内の「清掃係」として機能しているためです。

脂質異常症の基準

LDLコレステロール

140mg/dl以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/境界域高LDLコレステロール血症

HDLコレステロール

40mg/dl未満 低HDLコレステロール血症

中性脂肪(トリグリセライド/TG)

150 mg/dl以上 高トリグリセライド血症

Non-HDLコレステロール

※総コレステロールから善玉HDLコレステロールを除いた値です。
170mg/dl以上 高Non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dl境界域型高 Non-HDLコレステロール血症

脂質異常症の治療

脂質異常症が進行すると、動脈硬化も進行し、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの重篤な病気を引き起こします。そのため高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙習慣、肥満などの動脈硬化の危険因子を把握し、適切な治療を行うことが重要です。
内臓脂肪型肥満がある方で、脂質異常症、高血圧、糖尿病のうち2つ以上が合併するメタボリックシンドロームは、それぞれの数値が境界域でも動脈硬化のリスクを大幅に高めます。
肥満が見られる場合は、標準体重まで減量し、それを維持することが、脂質異常症などの生活習慣病の予防に繋がります。大規模な統計調査によると、標準体重が最も病気になりにくいことが示されています。標準体重を維持するために、運動や生活習慣の改善が必要です。

高尿酸血症

高尿酸血症とは

高尿酸血症とは

血液中の尿酸値が、高いままで維持される病気が高尿酸血症です。尿酸は水に溶けにくいため、血液中で尿酸塩となり、針状の結晶を形成します。これが関節に蓄積されると、炎症や鋭い痛みを伴う痛風発作を引き起こします。尿酸値が高い状態が長く続くと、腎臓病や尿路結石のリスクが増加します。ただし、尿酸値が高くても痛風発作が起こらないこともあるため、痛風発作がない場合でも、尿酸値が高いと指摘されたら早めにご相談ください。

痛風発作について

痛風発作は主に足の親指付け根に起こりますが、他にも足首や膝などに症状が出る場合があります。痛風発作は尿酸値の急激な上昇によってもたらされることが多く、その際には尿酸値を徐々に低下させる治療を行います。
また、激しい運動は発作の原因になる場合もありますが、尿酸値が高くても発作が起こらない場合もあります。

高尿酸血症の原因

高尿酸血症は、尿酸が通常より多く作られることによって発症します。尿酸はプリン体から作られるため、プリン体が含まれる食品を多く摂取すると、高尿酸血症を引き起こします。プリン体は魚卵、レバー、ビールなどに豊富に含まれるため、これらを多く摂取する食生活が主な原因となって高尿酸血症を発症します。
また、他の病気や代謝異常によっても尿酸が過剰に作られることがあります。さらに、腎臓の機能低下によって尿酸が十分に排出されない場合も発症の原因となります。

高尿酸血症の基準

尿酸値が7.0mg/dlを超えると、高尿酸血症と診断されます。
高尿酸血症は、血液検査で尿酸値を測定することで診断されます。
尿酸値は変動があるので、発作中は症状が落ち着いてから行います。

高尿酸血症の治療

まずは生活習慣の改善が必要です。適量でバランスの取れた食事をし、適正体重を維持することが求められます。
レバーやビールなどプリン体を多く含む食品を避け、野菜や海藻などアルカリ性食品を多く取り入れるようにしましょう。尿酸は尿から排出されるため、水分を十分に摂取して尿酸の排出を促すことも大切です。

痛風発作が起きている時の治療

痛風発作時には尿酸値を下げる治療は行わず、痛みを和らげるために消炎鎮痛剤などを使用します。発作中に尿酸値を下げる治療を行うと、症状が悪化する可能性があるためです。
症状が落ち着いた後で尿酸値を下げる治療を開始します。
適切な尿酸値を維持しないと、痛風発作が繰り返される恐れがあります。また、腎臓障害や尿路結石を予防するためにも、痛風を十分に治療する必要があります。


プリン体が多く含まれる食品

  • レバー
  • 豚肉
  • 牛のヒレ肉
  • エビ
  • アジの干物
  • イワシの干物
  • カツオ

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは

いわゆる「メタボ」として知られるメタボリックシンドロームは、運動不足や生活習慣の乱れ、肥満などが原因で起こります。
具体例としては、糖尿病のグレーゾーン、高血圧、脂質異常症、肥満などが重なると(症状が軽度であっても)、糖尿病だけでなく心臓や血管の病気を発症しやすくなります。
近年、自動車やデスクワークの普及、多忙な生活、食事の欧米化などにより、メタボリックシンドロームに該当する方が増加しています。

メタボリックシンドロームの種類

  • 内臓脂肪型肥満(内臓に脂肪が蓄積する)
  • 皮下脂肪型肥満(皮下組織に脂肪が蓄積する)

メタボリックシンドロームとは、内臓に脂肪が蓄積し、複数の慢性病が発症している状態を意味します。
内臓に溜まった脂肪細胞が、善玉因子であるアディポネクチンや、悪玉因子であるTNF-αやIL-6(インターロイキン-6)などを分泌します。悪玉因子が増えると、インスリン抵抗性が引き起こされ、それによって血糖値が上昇します。
また、脂質異常症や高血圧になるリスクが高まり、血管が老化する動脈硬化症にも繋がります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性の病気になるリスクが高まります。

メタボリックシンドロームの基準

必須項目

腹囲肥満(腹囲) 男性85cm以上、女性90cm以上

2項目以上

血圧 130/85mmHg以上
空腹時血糖 110mg/dL以上
中性脂肪 150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール 40mg/dL未満

※男女ともに、腹囲は内臓脂肪面積≧100㎠に相当します。

メタボリックシンドロームの治療

メタボリックシンドロームは生活習慣病の総称ですので、生活習慣の改善は治療の重要なポイントです。お心当たりのある方は、生活習慣病の治療やサポートに力を入れている当院までお気軽にご相談ください。また、健康診断で血糖値、尿酸値、悪玉コレステロール値、内臓脂肪型肥満を指摘された方も、ぜひご相談ください。

生活習慣を改善して
生活習慣病の予防・治療を!

塩分制限

塩分の過剰摂取は血液量を増加させ、血圧を上昇させます。塩分を制限することで血液量を抑え、血圧を低く保てます。日本高血圧学会は1日6g未満の塩分摂取を推奨しています。毎日の食材には約3gの塩分が含まれているため、調味料からの塩分は1日3g未満に抑える必要があります。ハム、ソーセージ、干物、漬物、スナック菓子、インスタントラーメンは塩分が多いため控えましょう。減塩は慣れないうちは大変ですが、出汁やスパイスなどを使って味に変化をつけ、酸味やうまみ、甘みなどでメリハリのある食事を楽しむ工夫が効果的です。

体重制限

最も病気になりにくいとされる標準体重まで減量し、その体重を維持しましょう。標準体重を維持することによって、生活習慣病の発症や進行を防ぐこともできます。標準体重は、次の式で算出できます。

標準体重(kg)= 体重kg ÷ (身長m)2

BMI22が標準体重、BMI25以上が肥満、BMI18.5以下が低体重です。低体重もまた、病気の発症リスクを高めます。肥満かどうかに関わらず、理由もなく急激に体重が変化する場合は、甲状腺や糖尿病など多くの病気が疑われるため、お早めにご相談ください。

飲酒

1日あたりの適正アルコール摂取量は25g(ビールなら500cc、日本酒なら1合)までと定められています。
前日に飲酒していない場合でも、1日の適正量が増えることはありません。

運動

軽く汗をかく程度の運動を習慣的に行うことは、生活習慣病の改善に役立ちます。
また、習慣的な運動は、肥満の解消、血流の改善、筋力アップ、骨の強化、呼吸機能の向上、ストレス解消にも効果的です。
ただし、腰や膝、心臓に持病のある方や、血圧の程度によっては運動の強度、時間、頻度、内容が制限される場合があります。
医師と相談しながら、無理なく運動を続けましょう。

禁煙

喫煙によって末梢血管が収縮し、血圧が上昇し、動脈硬化が進行します。そのため高血圧の方は禁煙が不可欠です。喫煙を続けると、たとえ他に徹底した生活習慣の改善を行っていても、その効果が出にくくなります。結果として生活習慣改善への意欲が下がり、継続も困難になります。また、喫煙は重篤な呼吸器の病気や歯周病の悪化にも深く関わっています。今後の健康のためにも、禁煙を始めましょう。

貧血

貧血は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度が低下した状態です。貧血にはいくつかの種類がありますが、最も一般的なのは鉄欠乏性貧血です。
血液の役割として酸素を全身へ届けることが大切ですが、ヘモグロビンがこの酸素の運搬を担っています。
ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」と呼ばれる色素と、たんぱく質が結合したヘムたんぱく質から構成されています。これが酸素と結びつき、全身に酸素を届けます。そのため、体内に含まれる鉄分が減少してしまうと、全身に運ばれる酸素が減少してしまうため、疲れやすさ、息切れ、運動機能の低下などの症状が現れます。

腎性貧血やビタミン欠乏症など貧血の原因は様々なので採血での評価が必要です。